戦略経営の実践(リレー講義)記録 一覧

戦略経営の実践(経営者リレー講義)第7回

2010年11月13日(土)

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国際経営特殊講義:戦略経営の実践
濱田 初美 教授
講演者
curriculum-management-101113-02月桂冠(株) 代表取締役社長(14代目)
大倉 治彦

老舗企業の理念

普段からお酒を嗜むわけではないが、「月桂冠」については京都の老舗でもあり、地理的感覚と小さい頃からのCMの影響から、非常に身近で馴染みのある企業であり、親近感を覚えながら楽しく講話を拝聴させていただいた。「親近感」については、この度の大倉社長のざっくばらんな話術と内容から「月桂冠」の社風そのものから醸し出されているようにも思える。

curriculum-management-101113-03老舗や相続経営という企業について、無知であったと痛感したが、感覚的なものとして保守的イメージを抱いていたが、「月桂冠」の新技術開発の取り組み、また海外事業展開などの挑戦や展開の経緯を知り、そしてまた社長の言葉には「運」との表現であったが、その「運」の歴史を創造してきた経営者の手腕や人柄が、発展の長い軌跡を辿ってきたのだと思うと感動を覚えた。

社長講話より「11代目 大倉恒吉(曽祖父)《中興の祖》、12代目 大倉治一(祖父)が優秀であった」とのことだったが、11代目の明治以降の日本の時代背景の中で、季節労働者の減少や後継者不足の当時の労働市場と環境条件が合致し、有利な背景条件において新開発に繋がったといえる部分もあったかもしれない。結果的には他の大手メーカーに先駆けて12代目が四季醸造を実現させ、それはやはり直接的なリーダー、11代目と12代目の先見の明と決断力に負うところが大きかったといえる。
この度の14代目 大倉社長自身の言葉としてではあるが、「13代目 大倉敬一(父)と違うやり方」は相続の考え方として当時も少なからず類似していると想像すると、現場の技術者たちの努力と知恵を結集させて、13代目とは違う手法で技術革新の時代を開拓されたのだろう。こうして歴代の月桂冠における技術高度化の弛まぬ努力が、画期的な新醸造法の開発、そして海外事業展開へと時代を駆け抜けたと思える。

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「日本酒」という技術的にも文化的にもきわめて繊細な商品は、海外進出を実行する苦難についてそう簡単に語れるものではないと推察できる。しかし「Gekkeikan」の日本酒ブームを巻き起こし、一企業の拡大発展につながっただけでなく、日本酒業界全体の大きな波及効果をもたらすことにもなった。それは一重に月桂冠の歴代からの理念「品質第一」をモットーとし、引継がれた相続経営の潜在的な大きな力が伺える。それは大倉社長の講話を拝聴しながら、懐の深さや温かさが伝承の含蓄する所大なりと感じるのである。

安定感と安心感を確保しつつ、大胆な挑戦・革新を通して新陳代謝をおこない、持続と変化のバランスの中で持続的発展を遂げてきたことは、老舗が継続する所以を考える上で非常に重要な意味を持つ。継承のノウハウや時代変化の体制といった強みは古いが故の強みであり、新しい取り組みへの挑戦を大いに下支えし、結果として企業の持続的発展につながるという図式が考えられる。老舗の持つ伝統と大胆な新しさへの挑戦は、社会的にまた世界的に認められた名誉ある価値である。(Y.S)

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戦略経営の実践(経営者リレー講義)第6回

2010年11月6日(土)

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国際経営特殊講義:戦略経営の実践
濱田 初美 教授
講演者
curriculum-management-101106-02ソニー生命保険(株) 取締役会長
安藤 国威

「ハードからソフト・サービスへのビジネスモデルの転換」
~ソニーの金融サービスグループの挑戦~

メーカーに勤務する自分は、新規事業に携わっている。そのテーマは“ハード”と“IT(ソフト)”の融合である。今回の講義は、非常に興味深い内容であった。大きく成長してきた企業のストーリーを知り、自分の考えを深めることができた。

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1. 企業文化
ソニーグループには「明確な経営哲学」がある。“企業文化”をトップから直接聞けたことに価値があると感じた。それは「真面目なる技術者の技能を、最高度に発揮せしむべき自由闊達にして愉快なる理想工場の建設」という設立趣意が、企業文化や事業戦略にそのまま表れていることである。事業成長への考え方に独自のものがある。集まってきている人材の気質も感じられる。ソニーの考え方が、全て正しいとは言い切れないが、他社が見習うべきところは多い。

2. 商品価値の創造
グローバル時代に突入している現在、商品価値をいかに維持していくか。技術力だけでは、生き残れない。例えば、テレビに求められているものは何か。これから攻めていく新興国のターゲットである中流層では、「映像が見ることができる」である。
コモディティ化された中品質低価格が求められる。先進国では高機能を付けても、すぐに価格競争に巻き込まれる。“モノ”だけでは、中長期的な観点で生き残っていけない。しかし、“ものづくり”だけでは、生き残っていくにはハードルは高い。
そうなると、選択肢とすれば「自社で持たない」で、異業種企業と強みをいかに上手く絡ませ、協業していくことができるかが、成長のポイントになるのではないだろうか。

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3. 成長へのキーワード
安藤会長のお話には、企業が成長するヒントとなるキーワードが埋め込まれていた。役立ちそうなものを挙げてみる。「価値連鎖型」、「商品のイメージを変えた(VAIO)」、「新しい事業領域では、土俵を変える」、「いかにルールを破るか」、「変化できるものが生き残る」、「突然変異と自然淘汰」、「寡占化に持ち込む」、「周囲を巻き込む」などであった。

まとめると、“常に新しい変化を生み出す知恵とパワー”が重要だということである。新しい変化はリスクも多いため、コンティンジェンシー・プランを常に考えておかねばならない。また、「結論は変えない」など“変化すべきこと”と“変えてはいけないこと”の明確化も重要である。変化の中にあっても、軸がぶれないことが大切である。(M.K)

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戦略経営の実践(経営者リレー講義)第5回

2010年10月30日(土)

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国際経営特殊講義:戦略経営の実践
濱田 初美 教授
講演者
curriculum-management-101030-02日本GE(株) 代表取締役社長
藤森 義明

GEと私の人生~グローバル時代をどう生きるか~

毎回毎回、個性豊かな経営者の方々の講義を拝聴しているが、藤森義明社長の発せられるエネルギーに圧倒されたというのが今回の正直な感想である。GEの人事システムは経営政策の講義でも教えて頂いていたので、どんな方なのだろうと楽しみにしていたが、私の想像の及ばないような強烈な競争社会で戦ってきたという自信と実力が緊緊と感じられ、敬服している間に終わってしまったという感覚だった。また、質問に対する回答が非常にロジカル且つ明解であり、私の目標とする経営者像そのものであった。

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今回吸収することができた内容は、リーダーシップについてである。非常に多くの要素が含まれた言葉であり、人に説明できる程度に自分の中で消化できていなかったが、経営政策・戦略経営の実践の講義を通じて得心することができた。それは、部分的に重なり合った2つの要素で成り立っており、1つは『自分の権限の及ばない人達を動かす力』、もう1つは『ビジョンを示し、変化を起こし、その変化を完遂する力』だということである。私が部品メーカで働いていた頃、セットメーカーやサプライヤのエンジニアともっと上手く協調する為には自分のポジション(肩書き)を上げるのが最も効率的だと考えていた。しかし実際は、自分が相手に対してビジョンを上手く示していなかった為に、相手の能力を充分に引き出せていなかったのではないかということに気が付いた。ディスカッションの内容や帳票類の完成度ばかりをアウトプットのクオリティーと認識し、企業によるバラつきをなんとか出来ないかと苦心していたが、そこに至る前にもっと考慮するべき事項(お互いに目指すべき目標の共有)があったことを現在は明確に理解することができた。ただ、私は以前からリーダーシップというこのカタカナの語感があまり良くないので、今後は統率力という言葉として積極的に意識して行動したいと考えている。

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次に、吸収することができた内容は、人材育成の考え方である。私が将来、部下や従業員を率いる立場になれるのかは分からないが、リスクを取ってある程度大きい権限を委譲するという手法は常に頭に置いておきたいと感じた。これも、上記統率力に関連することだが、明確なビジョンを部下や従業員に示すことができれば、積極的に権限を委譲でき、チャレンジしたチームがさらに成長するという理想的なスパイラルを描くことができる。「言うは易く行うは難し」の典型例かもしれないが、自分がリスクを負うのだという胆力を身に付けなければならないと感じた。
今回の講義は、130年以上に渡り事業が成立するGEの成功の源泉は人材であり、その人材のベクトルを同一方向に向かわせるものが企業文化であるということを肌で感じる機会となった。(T.K)

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戦略経営の実践(経営者リレー講義)第4回

2010年10月23日(土)

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国際経営特殊講義:戦略経営の実践
濱田 初美 教授
講演者
curriculum-management-101023-02(株)川島織物セルコン 代表取締役社長
中西 正夫

こだわりの物づくりと企業経営

今回、学んだことは次の3点である。
1. コスト競争の難しさ
川島curriculum-management-101023-03織物セルコンは長年の赤字を計上していた自動車事業を分社化した。中西社長によると、自動車事業は真善美を追求する拘りの物づくりとは合わなくなっていることが一つの理由とされた。これは、高付加価値の物づくりに拘る同社の姿勢の表れと取ることもできるが、コスト競争力がない弱点が残ったままで、手が付けられていない印象を持った。
美術工芸事業は特殊な事業であるので、一定のニーズはあるだろうが、同社の売上の大半を占めるインテリア事業に関しては、高付加価値なポジションを維持できるのかは疑問である。ニトリやイケアなどでは、それなりの品質やデザインで低価格の商品が販売されており、遅かれ早かれ、自動車事業のようなコスト競争に巻き込まれるのではと予測する。
中西社長の話しを通じて感じる同社の印象は、未だにプロダクトインの発想であり、社内の変革は進んでいないように感じた。新興国のキャッチアップのスピードは恐ろしく早く、高付加価値で生き残るのであれば、技術開発のスピードが要求される。同社は素材の開発から自社に取り込んでおり、垂直統合を基本としているようであるが、スピードアップするためには、他社とのコラボレーションも必要ではないかと感じた。

2. 神話の重要性
事業モデルを“需要(顧客)”がない“チューリップ・モデル”とされていたが、顧客が固定されないのであれば、なおさらマーケティング力を強化されるべきと考えcurriculum-management-101023-04る。講師自身でもマーケティングが弱いことを認められていたが、研究向けから生産機への方向転換をされる3年計画に対してマーケティング戦略が見えない。エッチング装置へシフトされているが、特化型の事業モデルは、イノベーションなど市場急変が起こればもろい。サムスンなど大手は、最後は“規模の経済”で財力により軌道修正が可能であるが、中堅企業では同じようにはいかない。生産機にシフトするのであれば、マーケティング力やグローバル人材戦略を強化されることが急務と考える。

3. トップの覚悟
印象に残ったのは、「社長と副社長では責任の重さが全く違う。社長は全ての責任を負う必要がある。社長は夜も眠れないときがあるが、副社長はぐっすり眠ることができる。」といったトップの責任の重さについての発言だった。トップにならないと分からない迫力のある言葉を聞くことができた。(S.J)

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戦略経営の実践(経営者リレー講義)第3回

2010年10月16日(土)

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国際経営特殊講義:戦略経営の実践
濱田 初美 教授
講演者
curriculum-management-101016-02サムコ(株) 代表取締役社長
辻 理

グローバル化と京様式経営

講義を通して、オーナー企業創業者の力強さと経験からくる言葉の重さを感じた。京様式経営について、日本企業の意思決定の遅さなどの指摘は、勉強になることが多かった。
お話の中に気になる点があり、そのうちのいくつかをご提言も含めて次に示す。
自己資本と投資:決算短信で確認するとサムコさんの自己資本比率は、かなり高く財務面の安全性を示している。ほとんどが現金による内部留保金である。内部留保金を保ち自己資本比率が高いことは、企業の安全性を示す材料である反面、投資家からすると配当などの株主還元が少ないとも見られる。事実として、出来高も少なく株価変動もあまりない。curriculum-management-101016-03
大手企業との比較で研究開発投資比率を指摘されていたが、少し極論過ぎるのではないだろうか。大手企業の研究開発投資比率が高いことは、必然でもある。中堅企業は、財務面から一点集中し効率的な投資をする。大手企業の研究には、市場全体の発展に貢献するため基礎研究などムダとも思われる幅広い研究をしている一面があると考える。

事業戦略:下請けにならず、特定の企業に依存しない姿勢は、生産財に特化した企業として納得のいく事業戦略である。しかしながら、サムコさんの現状は、台湾企業や国内の特定企業に偏った顧客構成になっているようである。今後、研究開発向けから生産機への移行で間口が広がる分、現地サポート体制の強化が気になる点である。これまで、独自性を強みにまわりを打ちのめす戦略で成長されてきたというお話があり、今後の事業戦略として自社リソースの活用、M&Aを挙げられていた。今後のさらなる事業発展には、他事業者との協業も選択肢に入れた事業戦略を検討されてはどうかと考える。
マーケティング力:事業モデルを“需要(顧客)”がない“チューリップ・モデル”とされていたが、顧客が固定されないのであれば、なおさらマーケティング力を強化されるべきと考える。講師自身でもマーケティングが弱いことを認められていたが、研究向けから生産機への方向転換をされる3年計画に対してマーケティング戦略が見えない。エッチング装置へシフトされているが、特化型の事業モデルは、イノベーションなど市場急変が起こればもろい。サムスンなど大手は、最後は“規模の経済”で財力により軌道修正が可能であるが、中堅企業では同じようにはいかない。生産機にシフトするのであれば、マーケティング力やグローバル人材戦略を強化されることが急務と考える。

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後継者:後継者に関して、まだあまり考えられていないのか、質疑であいまいな回答をされた。(この質問は、実は私の意向によるものであった。)京様式といわれる他社は世代交代がされているが、サムコさんの動向に興味がある。
現トップが優秀すぎるがゆえに、後継が育っていないのではないか。企業トップの継承準備は、重要な要素であると考える。(K.M)

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戦略経営の実践(経営者リレー講義)第2回

2010年10月9日(土)

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国際経営特殊講義:戦略経営の実践
濱田 初美 教授
講演者
curriculum-management-101009-02旭化成(株) 最高顧問
蛭田 史郎

旭化成の経営構造改革

本日は、蛭田さんが社長就任後の7年間に渡り取組まれた、旭化成の経営構造改革についてお話を伺った。特に環境変化の兆しを絶妙に見極めた事業ポートフォリオ改革の軌跡と、今後日本企業が真のグローバル化を実現するための十分要件について、独自のお考えをお聞かせ頂き、蛭田さんの比類なき先見性・目線の高さに感動を覚えながらの講義受講となった。

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特に本日、私が感銘を受けた内容は以下の2点である。

  1. 経営者としての人間性
  2. 次世代リーダの要件

まず、経営者としての人間性について述べられた内容で印象的であったのが、「最後に問われるのは会社の品格」というキーワードであった。私が勤める我が社の現状の品格を問われると耳が痛いが、私見ながら会社の品格が決まるのは、経営者の資質に依存すると考えている。

その点において蛭田さんは日本企業の真のグローバル化を阻んでいる要件を、一企業の経営者の視点のみならず、日本の国家的課題(税制面、教育面)から捉え、解決に向けた具体策として、日本人が多様性を認め、受け入れることだと述べられていたのが、印象的であった。我が社が真のグローバル企業に脱皮するための、必須要件であると感じ、大変な共感を覚えた。

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次に次世代リーダの要件として述べられていたのが、「どのような環境下にあっても、組織を成長させ豊かにするという強い使命感を持つ」というキーワードであった。その為には、「変革実行の強い意志と行動力」と「物事の本質を追究し続ける」ことが重要だと述べられていた。

私自身、立命館に入学した際は、一介の担当者であったが、今年4月から2名部下が付き、今月からは5名の部下を率いるプレイングマネジャーの立場となり、本日蛭田さんから伺ったリーダの要件を今後実践の上、組織活性化に生かしていく事を決意した。

今後近い未来に、時にはどん底を見ざるを得ない時がくるかも知れないが、自身の信念さえ揺るぎなきものがあれば、必ずそれを克服出来るものであると、本日蛭田さんから大きな勇気を与えられたと感じている。将来、私が成長した上で、少しでも日本企業の真のグローバル化に寄与することが出来るよう、自身のこれからの生き様について期待して臨みたい。(M.T)

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戦略経営の実践(経営者リレー講義)第1回

2010年10月2日(土)

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国際経営特殊講義:戦略経営の実践
濱田 初美 教授
講演者
curriculum-management-101002-02伊藤忠商事(株) 代表取締役会長
小林 栄三

グローバル時代における会社経営

以下は、当日の講義風景と講師の記念色紙、受講した院生のレポートです。

日本はグローバル企業が少なく、海外での人材育成が進んでいない。日本にある本社から海外への異動は多いが、今後は海外の企業から日本の本社に人材が流れてこなければならない。国籍・人種・性別・年齢に拘らず、多様性を受け入れて、世界の視点で活躍できる人材(ダイバーシティ)を育成していくことが、更なる発展へのキーワードとなる。外国人との文化の共有は難しいが、相手の文化を理解することが重要である。

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企業のあり方については、近江商人の経営哲学である「三方よし」の精神が今でも根付いており、利益の追求だけではなくCSRを実践している。上場企業は株主への還元を重視し、株価の上昇のため成長戦略を実践しなければならないが、長寿企業は人材の確保や教育を重視し、人材を大切にしている。

また企業のコアの部分を守りながら、イノベーションを起し、挑戦することが秘訣である。企業の歴史や伝統を守るために、時代にあった事業戦略を実践していかなければならないが、「三方よし」と「人材育成」は変えてはならない。

従業員が幸せになるためにはどうすればいいか、どう活性化させていくかを常に考え、従業員のチャレンジ精神を活かしていくことが重要である。

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人材教育の一環として、従業員へは諦めずに目標に向かって突き進む「ネバーギブアップ」の精神を持ち、自分のアイデンティティを確立することを伝えている。またコミュニケーション能力を高め、自分の強みをさらに強くすることが必要である。無関心にならず、様々なことに関心を持つことや何かを見つけようとしているかなど、従業員自らが向上心と自律性を指導している。また「挨拶をする」「嘘をつかない」「謝る」など、「当たり前のことを当たり前にやる」という基本動作を重視している。

大企業の経営者が中小企業の経営者と同様に、自らが人材の育成に携わり、人間性の成長に拘る基本的な行動や心構えなどをご指導されていることを知り、非常に感動した。企業を良くしたい一心で、最大の努力をしなければならないことを実践された結果が、企業の発展に結びついていることを強く感じた。(Y.A)

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戦略経営の実践(経営者リレー講義)第8回

2012年11月17日(土)

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国際経営特殊講義:戦略経営の実践
濱田 初美 教授
特別講師
新日鐡住金株式会社
三村 明夫

新日鐡住金株式会社の経営戦略

以下は、当日の講義風景と講師の記念色紙、受講した院生のレポートです。

三村明夫氏の経営哲学 日本企業の日本人経営者からリーダーシップのあり方を学ぶ

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三村氏登壇時のあの張りつめた空気。そこに日本経済の重鎮のカリスマ性をみたような気がする。第一印象は経営者というより政治家という印象を受けた。そして静かにプレゼンテーションが始まった。

プレゼンテーションとは何か?まさにそれを証明する3時間であった。三村氏はパワーポイントを使わない。そこには映像も画像もない。あるのは三村氏の存在とそして語り部である。これが本当のプレゼンテーションである。そしてこれが本当のメッセージの伝え方なのだ。

三村氏のリーダーシップとはイノベーションである。そして彼のイノベーションの定義は矛盾する課題を単に足して2で割るのではなく、その矛盾する課題を解決する方策のことであると三村氏は語った。講義の間に三村氏は何度も「危機」という言葉を繰り返した。しかしそこに悲壮感はない。むしろ希望が見え隠れしたような気がする。それは言葉そのものではなく、三村氏のもつリーダーシップから発せられるパワーかもしれない。当事者が危機感をもつことで問題意識が明確になり、組織全体がその課題解決への活気へと繋がる、これが三村氏のリーダーシップなのであろう。三村氏はさらに経営についてこう語った。

経営とは課題を認識し、共有し、実行することである。そして自分の言葉で語りかける。何回も、何回も、何回も、そして納得させることである。

三村氏のプレゼンテーションがまさしくそれであった。そしてリーダーシップについてはこう語った。「人の話しをとにかく聴く事。80%は聴く。残りの20%は自分の意思を伝える。」

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プラザ合意以降はコストダウン神話の様なものがあったという。コストカットを目的に高炉を止めた粗鋼メーカーはこれまでどこにもなかったが新日鉄は廣畑の高炉を止めた。このようなコストダウンを続ける会社に対して「いつまでこれを続ければよいのか?」という社員の質問に三村氏は答えられなかったのだという。このことを伝える時、三村氏は一瞬声を詰まらせたようにも見えた。一瞬涙ぐんだようにも。三村氏の経営者としての一面と、人としての一面が見えた瞬間でもあった。この時に三村氏のリーダーシップが醸成されたように私は感じた。

curriculum-management-121117-05講義時の三村氏と質疑応答の時の三村氏は全く別人のようであった。講義の時の三村氏は企業人であり、大学を訪れた外部講師の一面をみせていた。最初は原稿に時折目を通しながら、慎重に言葉を選んでいたが、休憩を挟んだ後の質疑応答の三村氏は本音で語るリーダーに変わっていた。
学生の質問に対し、少し考えた後に自分の言葉で話す、これは彼自身が語った「自分の言葉で語りかける」と言っていた言葉そのものであった。そして多くの質問が三村氏に投げつけられた。彼は必ずこう言った。『難しい事ですね。自分で考えて、答えを出すしかない』と。三村氏の言う事は一貫していた。そこに矛盾はなかった。
講義を終えた後の三村氏はさらに無邪気な子供の様な笑顔で私たちに手を振ってくれた。日本を代表する経営者とは思えないこの気さくな雰囲気と、最初に見せた政治家の様なカリスマ性を持った貫禄。日本を代表する日本人のリーダーを三村明夫氏に見た。(A.T)

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戦略経営の実践(経営者リレー講義)第7回

2012年11月10日(土)

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国際経営特殊講義:戦略経営の実践
濱田 初美 教授
特別講師
株式会社三井住友銀行 取締役会長
北山 禎介

株式会社三井住友銀行の経営戦略

以下は、当日の講義風景と講師の記念色紙、受講した院生のレポートです。

(株)三井住友銀行取締役会長北山禎介氏のご講義を拝聴して

curriculum-management-121110-03間接金融を担う我国金融機関の大半は、預貸率の低下と預貸金利鞘の縮小という問題を抱えている。国内景気の低迷が続き企業がバランスシートの圧縮を進めてきたことに加え、大企業において間接金融から直接金融への移行が進んだことや、新たな成長戦略を描けなかったことで新規産業を育てられなかったこと等が貸出金の低迷が続いている要因である。
一方、預金については、貯蓄率の低下が進んでいるとはいえ国民の金融資産は大幅に減少することなく推移している。近年は郵便貯金からの資金流出の受け皿として民間金融機関では順調に預金量が増加した。この貸出金の低迷と預金の順調な伸長によって、結果的に国内金融機関では預貸率の低下が続いている。
預貸率の低下はその反面として預証率の上昇を招くこととなるが、貸出金に比して有価証券利回りは相対的に低水準であることから、少しでも高い有価証券利回りを確保するためには、期間の長い債券を増やすか積極的にリスクの高い有価証券に投資するかのいずれかが必要となる。
顧客の預金を運用原資としたバンキング勘定による投融資を行う金融機関が高い信用・市場リスクをとることには限界がある。リスクを抑制しつつ利回りの高い証券投資を行うためには、リスクフリーの日本国債を中心とした有価証券ポートフォリオを構成せざるを得ない。しかしながら、長期の日本国債を大量保有することは信用・市場リスクを抑制できる一方で、大きな金利リスクを抱えることになる。

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有価証券ポートフォリオに占める長期国債の保有割合が増えると、修正デュレーションが長期化し金利リスク量の増加につながる。国内金融機関にはアウトライヤー規制と呼ばれる金利リスク量の規制がかけられているが、現在は計測期間中の金利変動が極端に小さくなっているために、アウトライヤー比率は各金融機関とも低水準になっている。しかしながら、アウトライヤー比率が低いことは金利リスク量が小さいこととイコールではなく、今後、金利上昇局面になった場合には一気に金利リスクが顕在化することになる。こういった預証率の上昇とそれに伴う金利リスク量の増加といった問題を解決するには、貸出金を増加させることで預貸率を上昇させる以外に方法がない。本来は国内景気の回復に伴って企業の投資マインド等が改善することによって貸出金が増加していくという流れが理想的であるが、日銀の金融政策と政府の景気対策の協調が図られていない状況で早期の景気回復を期待するのは現実的ではない。
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国内金融機関は、長年の護送船団方式による保護政策の影響により現在もオーバーバンキングの状況が続いており、コモディティ化の進む貸出は過当競争によって低金利競争にさらされている。北山会長の講義をお聞きし、中小地域金融機関においては貸出金増加によって金融機関全体のトップラインを増加させることを追求するよりも、早期に金融機関同士の合併を進めることによってコストシナジーを追求し、ボトムラインを上げる方向性の検討が必要ではないかと感じた。(O.M)

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戦略経営の実践(経営者リレー講義)第6回

2012年11月03日(土)

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国際経営特殊講義:戦略経営の実践
濱田 初美 教授
特別講師
日本マクドナルドホールディングス株式会社
原田 泳幸

※原田氏よりコメントをいただきました

日本マクドナルドホールディングス株式会社の経営戦略

以下は、当日の講義風景と講師の記念色紙、受講した院生のレポートです。

日本マクドナルド CEO 原田 泳幸 様

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■感動した3つの言葉
①『戦略はどれが正しいという回答はない。どれを選択するかが重要。その戦略の実行が難しい。しかし、失敗というのはない。それは成功に向かう過程と考えるべき。そんなにすぐにゴールがくるビジネスというものはない』

失敗は成功のもと、という言葉よりももっと深い、自分の中で腑に落ちる言葉でした。失敗したから成功した、というような短絡的なものではなく、成功するためには通るべきプロセスだったと考えるべきだと理解したためです。なるほど、そう考えれば確実に前に進める。そんな勇気が自分の中に生まれた瞬間でした。

②『ひらめきとは、考えてきたからこそひらめくもので、考えてもいないときにひらめくのは思いつきにすぎない。思いつきではヒットしない』

「ひらめき」と「思いつき」をここまで区別して考えたことはありませんでした。しかし、教えていただいた通り、ひらめきと思いつきは全く違うものだと思います。現在の私に課せられた業務上の課題は、全くの新しい目で業務項目を取捨選択し、現部署が果たすべき役割を、会社として求められているものに改革することなのですが、やはりそこには新しい「アイデア」が必要となります。本日、はっきりと認識しました。思いつきを待つのではなく、考え続ける中でひらめきを待とうと。

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③『何か変だなと思ったとき、原因は自分にある。現場にてコミュニケーションをはかり、問題点をさがす。ビジネスの原点は現場である』

curriculum-management-121103-06上から目線で物事を見てしまっているとき、実はそういう時こそが、もう一度自分を省みるタイミングなのだとこれまでの経験上学んできました。一つ二つの仕事が上手くいったくらいで、それが自己の能力的な実力と判断するのは早いにも関わらず、思わず調子に乗ってしまい、次の仕事で失敗するという経験があるためです。
『原因は自分にある』この言葉を聞いたとき、違和感の原因は他人ではなく自分にあるという意味で共通点を感じ、私のスタンスに自信を持つことができました。同時に、たとえCEOになっても持ち続けるべき大事な考え方なのだとも学びました。
本日は貴重なお話有難うございました。(A.Y)

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