2018年度戦略経営の実践(経営者リレー講義) 一覧

戦略経営の実践(経営者リレー講義)第8回

2018年11月17日(土)

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特殊講義:戦略経営の実践
濱田 初美 教授
特別講師
第一生命ホールディングス株式会社 代表取締役会長
渡邉 光一郎

真の価値創造を目指して

立命館大学 大学院 経営管理研究科(RBS)は第一生命HD代表取締役会長の渡邉光一郎氏を招聘し、「戦略経営の実践」特別講義を行った。受講生レポートから講義内容を紹介する。

本日は貴重なご講義、誠に有難うございます。第一生命様の経営に対する価値観とそれを実行する組織論のお話は、レベルは全く異なりますが仕組み化に課題を感じながら部門運営を行っている私にとって大変多くの学びになりました。curriculum-management-181117-hp-03
渡邉会長のご高話で最も印象的で共感を覚えたのが株主を経営品質の基本理念にあえて表現しない考え方です。株主は経営を監視する役割、経営者の後ろにいる存在と捉え、顧客、社員、社会を見ることこそが企業経営においてより重要であるというご指摘に大変共感を覚えました。実は別の授業で企業の社是や経営理念を調査し学ぶ機会があり、そこで自分なりに、ステークホルダーに順位を付けてみました。結果は、顧客、社員、社会が上位3つであり、まさに第一生命様のDSR経営と同じでした。
欧米では常に株主を意識した経営が主流です。もちろん出資者である株主は企業にとって重要なステークホルダーであることは間違いありません。しかし企業経営、特に従業員が取り組む日々の業務において浸透すべき“旗印”は株主よりも顧客、社員、社会の3つのステークホルダーであるべきだと考えます。この3つが満たされた状態であれば持続可能な企業となるはずです。また財務的成果も上がり、結果的に株主にも十分還元できる状態になるのではないでしょうか。

渡邉会長が関ケ原の戦いの例でご指摘されていた通り、いくら素晴らしい理念があっても実践されなければその価値はありません。その意味においてもDSR経営の基本理念は従業員が自分事に落とし込んで考えられるものであり、社員全体に浸透させ、実践することが理念の目的だとすれば最も納得感があるものだと思います。

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curriculum-management-181117-hp-07次に印象的だったのが、多様性への対応と仕組化です。生命保険の仕事といえば、成果主義=売上至上主義のような世界だと思っていましたが、DSR経営の理念に沿った多様な成果に対し様々な形で評価される取り組み方に大変感服した次第です。そして評価制度もきっちり仕組み化されておられました。その中で渡邉会長の現場主義のご指摘に大変合点がいきました。それは、枠組みがなければ現場で正しい判断などできない、なぜならその時見えたものだけで判断する場合があるからだというご指摘です。
真の現場主義とは仕組みをマネジメントすることであると学ばせて頂きました。

最後に、失礼ながら今後の第一生命さまの事業展開案として、地域社会の人と人をつなげる仕組みを提供されてはどうかと考えます。例えば、若者と高齢者をつなげるようなサービスです。今後、高齢化社会が進み肉体的なサポートが必要な方が益々増えると考えます。その方がちょっとしたサポートが必要な時に地域社会における世話役的立場として人と人を繋げるサービスを提供するものです。社会貢献と営利活動を両立するものであり、御社の理念とも合致するのではないかと考えた次第です。
私も顧客、社員、社会を向き、理念とマッチする多様な成果を評価し、新たな価値を常に創造する経営を目指し、先ずは自らの組織でこれを実践して参ります。(G・R)

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戦略経営の実践(経営者リレー講義)第7回

2018年11月10日(土)

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特殊講義:戦略経営の実践
濱田 初美 教授
特別講師
AGC株式会社 取締役会長
石村 和彦

AGCから見た液晶産業とその背景にあるもの

立命館大学 大学院 経営管理研究科(RBS)はAGC㈱取締役会長の石村和彦氏を招聘し、「戦略経営の実践」の特別講義を行った。受講生レポートから、講義内容を紹介する。

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液晶パネル産業におけるガラスメーカー視点での変曲点の話は、非常に新鮮であった。特に、某社の薄膜化戦略(新商品を展開する際に、基板厚の標準を変更することにより既存窯で新製品を作る余裕を捻出)によって、液晶パネル向ガラス基板供給過剰になり価格下落したとのお話から需給バランスの重要性を再認識することができた。

市場において影響力を持ち、高い利益率を確保するためには、シェアNo.1になることが不可欠なのだ。また、シェアを獲得するためには、講義終盤でご教授いただいた6項目の要素を考慮した上で、独自戦略を持たなければいけないということを、今回の講義を通して学ぶことができた。石村会長が日本の液晶産業の歴史を振り返り、50社以上の工場に自ら足を運んで見出された“製造業を成長させるための要素”が以下の6つである。

1.世界に先駆けて開発し、その商品を特許などによって権利化する。
2.競合より早く、顧客要求する商品を上市する。
3.他社に先駆けて大型投資を行い、大量の生産能力を確保する
4.ニッチな分野で、ビジネスを展開する。
5.販売やアフターサービスも含めて、ビジネスを強化する。
6.他社にはない、優れた『生産システム』を持つ。

curriculum-management-181110-hp-03我社がメーカーとして一定シェアを確保することができた理由を振り返ると4と5が当てはまる。特定機種に特化することで性能を向上させ、製品納入後のプロセス課題解決に積極的に協力することで、顧客からの信頼を得られていたと推定できる。
しかし、今回のご講義を聴いて、今後我社が更に成長していくためには、“2.”の要素を獲得することが重要なのではないかという考えを持った。残念ながら我社には、某社のように、クリアできるかもわからない顧客要求に対して『ハイ、やります』とすぐに言えるような技術者や営業はいない。
競合より早く顧客が要求する製品を上市するためには、顧客の真意をいち早く察知し、開発を進める必要がある。そのためには、日頃から顧客と積極的で前向きなコミュニケーションをとらなければならない。

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製造業において、顧客要求を新しい製品を生み出すトリガーにするためには、技術を理解できる社員(≒技術者)が顧客と対峙することが望まれる。今後、私は技術者として、そのような人材になるように行動していきたい。自らで実践することで、“2.”の有効性を社内で確立することができれば、企業文化変革を担える可能性がある。
確かに企業文化を変えることは難しいのかもしれないが、影響力の届く範囲を少しずつ拡げていければ、変えることができると信じて頑張っていきたい。(W・S)

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戦略経営の実践(経営者リレー講義)第6回

※第6回の日本経済新聞社様は掲載不可の為ございません。


戦略経営の実践(経営者リレー講義)第5回

2018年10月27日(土)

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特殊講義:戦略経営の実践
濱田 初美 教授
特別講師
株式会社安川電機 代表取締役会長
津田 純嗣

経営の歴史と未来

立命館大学経営大学院(RBS)は、㈱安川電機 代表取締役会長の津田純嗣氏を招聘し、「戦略経営の実践」特別講義を行った。受講生レポートから当日の内容を紹介する。

講義から学んだこと
電動機(サーボやインバータ)、ロボット産業分野で世界トップレベルのシェアを占めている理由がよく解りました。メカトロ二クスコンセプトを世界に先駆けて提唱され、電動機を主体としながらもcurriculum-management-181027-hp-02一早く「物づくりのオートメーション化の時代がくる」と市場の先読みをされロボット事業に取り組まれました。
TQC活動を始めとした企業文化の転換に成功され、チャレンジ精神をうまく残しながら、会社方針に社員のベクトルを合わせることで最先端の技術と製品を生み出す原動力を強化されました。さらに近年のIndustrie4.0では、現場で実際に困って求められているフィジカルへのアプローチに重点をおき、BTO生産等、他社との差別化が図られています。需要を的確に捉えられており、今後益々成長されると思います。

講義で最も感銘を受けたのは、御社の経営理念「社会の発展、人類の福祉に貢献することにある」と社是「技術立社」に基づいた製品開発をされていることです。先ず、ロボットの元々の開発理由が3K職場撲滅というのは、非常に素晴らしいと考えます。初めは、あまり利益が上がっていなかったとのお話でしたが、当初の開発理念を信じ継続開発されたことで徐々に社会に浸透し、今では無くてはならないものになっており、多品種少量生産の時代では、更に重要なものになっていきます。

現在、取り組んでおられる医療・福祉機器も将来的には社会に広まり利益を生む事業になるに違いないと思います。このような社会や人に貢献する技術は、いつか必ず世界に広がることになると感じました。

自社の製品開発においてもこの概念はとても参考になり常に意識していきます。

curriculum-management-181027-hp-03次に「技術立社」を重視されており、「無いものは自分たちでつくる」という方針が御社の大きな強みになっていると感じました。この方針から、アクチュエーター、モーション制御技術、ロボット技術など次々に最先端製品を生み出され、工場生産ラインの大部分を御社製品でカバーし優位性を築かれています。また、デジタル化推進の時にOS開発まで手がけられた経験は大変だったとの事でしたが、御社のキャパシティ把握に役立ち、今後の開発に活きるのではないかと感じました。
自社でもどこまで開発出来るかは良く議論になりますが、御社のように限界ギリギリまでチャレンジすることは、キャパシティ上限の拡大に繋がると思いました。curriculum-management-181027-hp-06

所感と今後の展開案
御社の変革、成長に大きく関わられた津田会長のご経験・お話は大変学びになりました。会長のハッキリしたお考えや本音のご意見は、ロジカルで本質を突いているものであり、とても引き込まれました。
本社を北九州から動かさない理由や少子高齢化による労働力減少対応のため、生産ライン自動化は単純に人を機械に置き換えるのではなく、半自動や協働がキーになるなどのお話は非常に納得感がありました。
今後の提案として、医療介護用機器は国内では保険点数が付かないと広がり難いとおっしゃられ、中国の方が先に市場になるかもとの事でした。そういう状況であれば、受け入れてもらえるところに先に入る方が、実績になり効果的にアピールできるのはと考えます。 (M・S)

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戦略経営の実践(経営者リレー講義)第4回

2018年10月20日(土)

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特殊講義:戦略経営の実践
濱田 初美 教授
特別講師
日本たばこ産業株式会社(JT) 代表取締役社長
寺畠 正道

JTの変革とグローバル化

立命館大学経営大学院 経営管理研究科(RBS)は、JTの代表取締役社長の寺畠正道氏を招聘し、 「戦略経営の実践」の特別講義を行った。受講生レポートを中心に当日の内容を紹介する。

多くの日本企業がクロスボーダーM&Aにおいて、失敗するケースが多い中、JTはたばこ事業におけるM&Aを次々に成功させ順調に事業を拡大し続けている。その秘訣は何か。(失敗する他社との違いはどこにあるのか)

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①グローバル企業への転換、グローバル競争を勝ち抜くためのM&A
・経営理念は「4Sモデル」の追求。「お客様を中心といて、株主、従業員、社会の4者に対する責任を高い次元でバランスよく果たし、4者の満足度を高めていく」
・たばこ事業におけるクロスボーダーM&Aは『成長の時間を買う』手段と位置付け。あくまでも買収は手段。買収の成功は統合の成功である。
・3つの市場「製品・サービスの市場」、「人財市場」、「資本市場」での競争力にフォーカスしたM&Aを行う。
②経営理念「4Sモデル」に基づいた中長期的事業投資
・グローバルなたばこ事業について、「既存市場での持続的成長」、「新興市場を中心とした地理的拡大」、「RRPでの成長加速」の3つを戦略の柱としている。
③グローバル経営と自立・自律経営
・グローバル経営の基盤確立「強力なリーダーシップの発揮」、「日本人に拘らない人材登用」、「ルールと価値規範によるグループ会社のガバナンス」、「欧米・日本双方の強み融合」、「対話の徹底」。
・ガバナンスを前提とした自立・自律経営「責任権限の明確化」、「徹底した見える化」、「主体性・オーナーシップマインドの鼓舞(箸の上げ下ろしまで言わない)」。

JTは、たばこ事業を中心に約20年前から海外の大型買収を成功させ、日本におけるクロスボーダーM&Aの先駆者的存在である。
寺畠社長の講義を聞き、JTにおけるM&Aの強みは、①買収企業の組織・人をスピーディーにJTグループに融合(統合)させることに最大限注力していること、②M&Aを主体的に行っている子会社JTIにJT本社から大幅な権限移譲を行っていることであると感じた。
JTは、グローバル企業としてダイバーシティを重視し、優秀な人材は登用しガバナンスを通して権限を大幅に現場(JTI等)に移譲している点が、日本本社で重要事項をグリップしようとする他の企業(失敗する企業)と決定的に違うと感じた。
また、経営理念「4Sモデル」で『お客様』を中心に置くことで、グローバルな市場においても社員がブレることなく、グループの目標に向かって進めるよう理念を共有・定着させていることは素晴らしい。(簡単にできることではない。)社長自身が、国内外の各事業所に出向き、現地社員とのコミュニケーションを非常に大事にしていることは大変興味深く感じました。
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私自身、企画部門在籍時に“現場の意見は細かい文句が多すぎる”と感じることがあり、現場部門とある程度距離を置くようにしていましたが、講義で社長のお話を聞き、反省しているところです。組織の最大の資産は「人財(社員)」であり、価値観(理念)共有のためのコミュニケーションの重要性を改めて思った次第です。

貴重なお話を本当にありがとうございました。(H・T)

 

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戦略経営の実践(経営者リレー講義)第3回

2018年10月13日(土)

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特殊講義:戦略経営の実践
濱田 初美 教授
特別講師
日本郵船株式会社 代表取締役会長
工藤 泰三

物流から見た日本・世界の経済

立命館大学大学院 経営管理研究科(RBS)は、日本郵船㈱代表取締役会長の工藤泰三氏を招聘し、 「戦略経営の実践」の特別講義を行った。受講生レポートを中心に当日の内容を紹介する。

貿易立国として存続の危機にある日本の現状と課題を幅広い視点から認識することができました。少子高齢化社会など大きな構造変化によって未曾有の環境に突入する日本。世界経済の中での地位が大きく低下しつつある日本。厳しい環境変化の荒波の中で、長年にわたり競争を勝ち抜いてきた先見性高い日本郵船トップからの危機感に満ちたお話に、強い危機感を感じるとともに背筋が伸びる思いがしました。

 

 

世界の潮流は、輸出入の形(量・方向)に現れてくる。物流から経済が見えてくる理由はここにあると思いました。確かに、豊かさを運ぶ物流は、経済の大動脈であり、重要なインフラであるとともに、お互いcurriculum-management-181013-hp-02の経済力の強さを反映しており、そこから見える世界経済の構図は、経済成長の中心が欧米から東アジアへ移りつつあるなど、ここ十数年で一変していることが分かります。世界を俯瞰し、潮流を見ることができる。これも日本郵船が物流の世界で存在感を示し続けられる要因の一つだと感じました。

 

環境の変化には、循環的要因や構造的要因など奥の深い課題が潜んでいます。この度の講演では、日本郵船の重職を担われている工藤会長が日本経済や世界経済の背景にも精通しておられ、見識の広さ・深さに感服致しました。自動車業界など製造業の生産拠点シフト、新興国の成長、労働力の枯渇、ASEANの躍進、農業の成長可能性、Eコマースがもたらす脅威と変革。分野、規模、地域、特性は様々ですが、いずれも、経営にとって脅威にもチャンスにもなり得ます。工藤会長の見識の広さ・深さは、リスクにもチャンスにも備える日本郵船の経営者としての責任感と心構えによるものだと推察した次第です。と同時に、新たなビジネスチャンスを捉えるのに十分な準備ができているところに、日本郵船が長い歴史の中で競争に勝ち残ってきた強さの秘訣を垣間見た気がします。

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あらゆる場面で数字を示し、明快で分かりやすい説得力ある説明をしていただきました。経営者が多くの社員と理念やビジョンなど思いを共有し、一体感を持って経営を行うためには、個人一人一人に納得感を持ってもらうことが極めて重要です。工藤会長は、普段から「数字で語る」ことで、戦略や方針に客観性や明瞭性を持たせ、役職員のベクトルを合わせることに注力されてきたのではないでしょうか。経営の実践に当たり、「数字」は経営者にとって大事なツールだと感じました。

 

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「人材こそが会社の成長の源泉」や「環境への対応なくして次はない」、「必要な人材は、何かに興味を持って考えられる人材」、「ビジョン等の共有で大事なのは相手をリスペクトすること」など、経営者として心掛けておくべき金言も多くいただきました。
今後、自らを磨く時の糧にしたいと思います。お忙しい中、ご講演いただき、感謝申し上げます。ありがとうございました。(E・K)

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戦略経営の実践(経営者リレー講義)第2回

2018年10月6日(土)

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特殊講義:戦略経営の実践
濱田 初美 教授
特別講師
三井物産株式会社 代表取締役会長
飯島 彰己

激変する事業環境と三井物産の経営戦略

立命館大学大学院 経営管理研究科(RBS)は、三井物産㈱代表取締役会長の飯島彰己氏を招聘し、 「戦略経営の実践」の特別講義を行った。受講生レポートを中心に当日の内容を紹介する。

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「激動」の時代を生きる
講義を受けて、飯島会長が激動の時代を生きる中で、絶えず世界的にアンテナを張り、自ら見聞きすることの重要性を意識され、国内や諸外国の要人との接触を大切し、この度の講義もGIVEだけでなく、学生の意見を聞く意味でTAKEである。とおっしゃる姿勢に感銘を受けた。また、飯島会長が何度も述べられていた「現場力」とは、勝手な解釈であるが、弱肉強食の世界を生きる「野生の力」に近いものではないかと感じることができた。
企業という生き物も、弱肉強食の世界で生き残らなければいけない。いつ出現するかわからない敵に対して一瞬でも気を抜くことができない。飯島会長が、事業案件の判断において、スッキリとしたものは大概うまくいくが、「もやもや感」があるものは、ネガティブに捉えようとしているとおっしゃった、これはまさに「野生の嗅覚」ではないか。この嗅覚こそ、経営者としての「現場力」がなせる業なのではないかと感じられた。

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創造の時代
イノベーション、とりわけAI,ロボティクスの発展が進む中で、従来の観念である業種を超えた事業領域が生まれる中で、総合商社の事業は「需要と供給」の関係から「課題と解決」の関係へ変化しているとの言葉があった。グローバリゼーションが進む中で、新興国の経済的発展が進み、過去の互恵的パートナーシップ(生産技術と資金を持つ先進国と、資源や安価な労働者を持つ新興国)の関係が変質する中で、今後はより高いサービスや社会的課題解決に向けた事業提案、これが本質的に求められる時代となった。
あらゆる業態で共通するのが、未来が過去の延長線上では考えられない時代であり、いかに想像し、いかに事業化へ展開していくかが求められる中で、価値創造ができない企業はいずれAIやロボティクス等の波にのまれていく時代に突入していると改めて認識することとなった。
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自らの振返り
『社長の後ろに人はいない。』この言葉が、講義の中で一番心に刺さった言葉である。日頃、業務の中で、「部」の業務責任を負ってはいても、自らの組織に対する経営責任を自覚しているものではない。まして最終判断が組織の存亡を招きかねないという重い判断をしたことはない。絶えず現場を見据え、想像し、「現場力」を磨くことで、その時に備えていきたいと思う。飯島会長に貴重な時間を割いてご講義頂き、このような気づきを与えて頂いたことに深く感謝したい。(O・H)

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戦略経営の実践(経営者リレー講義)第1回

2018年9月29日(土)

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特殊講義:戦略経営の実践
濱田 初美 教授
特別講師
塩野義製薬株式会社 代表取締役社長
手代木 功

持続的な企業価値創造を目指した経営の実践

立命館大学大学院 経営管理研究科(RBS)は、塩野義製薬㈱代表取締役社長の手代木功氏を招聘し、 「戦略経営の実践」の特別講義を行った。受講生レポートを中心に当日の内容を紹介する。

 手代木社長の約90分間のプレゼンテーションは、洗練されて非の打ち所がない内容であった。ほぼ完璧にまとめられた資料で、これまでの塩野義製薬の取り組みを非常にわかりやすくご説明いただいたのでcurriculum-management-180929-hp-02、講演内容に強い納得感が得られた。
一方、一つ一つの取り組みを実際に考えて、行動に移して成果に繋げるためには、多大な労力を要したであろうと思う。有効な戦略を思いつくこと自体は、一定の能力を持った人にとって、それほど難しいことではないのかもしれない。しかし、自分自身のことを強く信じることができなければ、それを実行することは困難である。自信を持つということは、異なる意見を持つ他者よりも自分が正しいと思えることであり、それは幅広い知識/知見/視座を持った上で、誰よりも考えているという自負を持つことだと思う。
社長塾の主目的として挙げられていた『全社視点(他バリューチェーンの理解)』、『Toughness(現業のパフォーマンス+厳しい課題)』、『学び続ける姿勢(社長塾リターンズ)』は、まさにそういった自負を成長させるために必要な要素であると理解した。

手代木社長curriculum-management-180929-hp-03は、方針を決定する上で、自らで獲得した知識や情報をベースとして、世の中には存在しない基準を自らで作って決断されているように思った。現在私が勤めている会社も歴史が長いため多くのしがらみが存在し、変革を妨げる要素が多いことは容易に想像できる。今回の講演では、そんな状況下であっても、自分が正しいと思えることを行動に移して会社を改革することは可能であるという事例を示していただいた。手代木社長ほどの能力は無いが、自分ができることを全力で考えてやっていけば、会社を変えることができる可能性はあると思うことができた。

質疑応答の中で、お話いただいた後継の話は、非常に興味深かった。正直、これだけの功績を残された手代木社長の後継者は、相当荷が重い。後継には、“情報やデータ等をベースにして、次に必要なものは何か?何をするべきか?を考えられる人”、“その時点では認識されていない概念をクリスタライズできる人”が望ましいということであったが、それを実現できる人は、非常に稀な人材であるように思う。

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仮に存在したとしても、それを従業員や様々なステークホルダーに説明して納得させる能力も同時に必要となる。果たしてそれだけの人材が本当に見つかるのだろうかというところに少し懸念を感じた。現実的に完璧な後継指名はなかなか難しいように思う。
後継候補に社長の座を譲った後も、当分の間は手代木社長が会長となり、支援を続けていくスタイルが望ましいのではないでしょうか。(W・O)

 

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