戦略経営の実践(経営者リレー講義)第4回

2010年10月23日(土)

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国際経営特殊講義:戦略経営の実践
濱田 初美 教授
講演者
curriculum-management-101023-02(株)川島織物セルコン 代表取締役社長
中西 正夫

こだわりの物づくりと企業経営

今回、学んだことは次の3点である。
1. コスト競争の難しさ
川島curriculum-management-101023-03織物セルコンは長年の赤字を計上していた自動車事業を分社化した。中西社長によると、自動車事業は真善美を追求する拘りの物づくりとは合わなくなっていることが一つの理由とされた。これは、高付加価値の物づくりに拘る同社の姿勢の表れと取ることもできるが、コスト競争力がない弱点が残ったままで、手が付けられていない印象を持った。
美術工芸事業は特殊な事業であるので、一定のニーズはあるだろうが、同社の売上の大半を占めるインテリア事業に関しては、高付加価値なポジションを維持できるのかは疑問である。ニトリやイケアなどでは、それなりの品質やデザインで低価格の商品が販売されており、遅かれ早かれ、自動車事業のようなコスト競争に巻き込まれるのではと予測する。
中西社長の話しを通じて感じる同社の印象は、未だにプロダクトインの発想であり、社内の変革は進んでいないように感じた。新興国のキャッチアップのスピードは恐ろしく早く、高付加価値で生き残るのであれば、技術開発のスピードが要求される。同社は素材の開発から自社に取り込んでおり、垂直統合を基本としているようであるが、スピードアップするためには、他社とのコラボレーションも必要ではないかと感じた。

2. 神話の重要性
事業モデルを“需要(顧客)”がない“チューリップ・モデル”とされていたが、顧客が固定されないのであれば、なおさらマーケティング力を強化されるべきと考えcurriculum-management-101023-04る。講師自身でもマーケティングが弱いことを認められていたが、研究向けから生産機への方向転換をされる3年計画に対してマーケティング戦略が見えない。エッチング装置へシフトされているが、特化型の事業モデルは、イノベーションなど市場急変が起こればもろい。サムスンなど大手は、最後は“規模の経済”で財力により軌道修正が可能であるが、中堅企業では同じようにはいかない。生産機にシフトするのであれば、マーケティング力やグローバル人材戦略を強化されることが急務と考える。

3. トップの覚悟
印象に残ったのは、「社長と副社長では責任の重さが全く違う。社長は全ての責任を負う必要がある。社長は夜も眠れないときがあるが、副社長はぐっすり眠ることができる。」といったトップの責任の重さについての発言だった。トップにならないと分からない迫力のある言葉を聞くことができた。(S.J)

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