戦略経営の実践(経営者リレー講義)第3回

2010年10月16日(土)

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国際経営特殊講義:戦略経営の実践
濱田 初美 教授
講演者
curriculum-management-101016-02サムコ(株) 代表取締役社長
辻 理

グローバル化と京様式経営

講義を通して、オーナー企業創業者の力強さと経験からくる言葉の重さを感じた。京様式経営について、日本企業の意思決定の遅さなどの指摘は、勉強になることが多かった。
お話の中に気になる点があり、そのうちのいくつかをご提言も含めて次に示す。
自己資本と投資:決算短信で確認するとサムコさんの自己資本比率は、かなり高く財務面の安全性を示している。ほとんどが現金による内部留保金である。内部留保金を保ち自己資本比率が高いことは、企業の安全性を示す材料である反面、投資家からすると配当などの株主還元が少ないとも見られる。事実として、出来高も少なく株価変動もあまりない。curriculum-management-101016-03
大手企業との比較で研究開発投資比率を指摘されていたが、少し極論過ぎるのではないだろうか。大手企業の研究開発投資比率が高いことは、必然でもある。中堅企業は、財務面から一点集中し効率的な投資をする。大手企業の研究には、市場全体の発展に貢献するため基礎研究などムダとも思われる幅広い研究をしている一面があると考える。

事業戦略:下請けにならず、特定の企業に依存しない姿勢は、生産財に特化した企業として納得のいく事業戦略である。しかしながら、サムコさんの現状は、台湾企業や国内の特定企業に偏った顧客構成になっているようである。今後、研究開発向けから生産機への移行で間口が広がる分、現地サポート体制の強化が気になる点である。これまで、独自性を強みにまわりを打ちのめす戦略で成長されてきたというお話があり、今後の事業戦略として自社リソースの活用、M&Aを挙げられていた。今後のさらなる事業発展には、他事業者との協業も選択肢に入れた事業戦略を検討されてはどうかと考える。
マーケティング力:事業モデルを“需要(顧客)”がない“チューリップ・モデル”とされていたが、顧客が固定されないのであれば、なおさらマーケティング力を強化されるべきと考える。講師自身でもマーケティングが弱いことを認められていたが、研究向けから生産機への方向転換をされる3年計画に対してマーケティング戦略が見えない。エッチング装置へシフトされているが、特化型の事業モデルは、イノベーションなど市場急変が起こればもろい。サムスンなど大手は、最後は“規模の経済”で財力により軌道修正が可能であるが、中堅企業では同じようにはいかない。生産機にシフトするのであれば、マーケティング力やグローバル人材戦略を強化されることが急務と考える。

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後継者:後継者に関して、まだあまり考えられていないのか、質疑であいまいな回答をされた。(この質問は、実は私の意向によるものであった。)京様式といわれる他社は世代交代がされているが、サムコさんの動向に興味がある。
現トップが優秀すぎるがゆえに、後継が育っていないのではないか。企業トップの継承準備は、重要な要素であると考える。(K.M)

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