戦略経営の実践(経営者リレー講義)第1回

2012年9月29日(土)

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国際経営特殊講義:戦略経営の実践
濱田 初美 教授
特別講師:
村田機械株式会社代表取締役社長
村田 大介

村田機械株式会社の経営戦略

以下は、当日の講義風景と講師の記念色紙、受講した院生のレポートです。

「戦略経営の実践」村田機械㈱村田大介社長の講義から学んだこと

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「やめる」ことが大切
多事業を預かる経営トップの意思決定の中で最も重要なことの一つに「やめること」を挙げられた。創業家の経営者としては、創業事業やかつて会社の業績を支えた事業から撤退するのは本当に難しい意思決定になるだろうと思われる。
事業撤退のトリガーとなるものは何であろうか。事業別の業績管理ができていることが最低条件であろう。私が所属する企業では事業部別のROIC(投下資本利益率)を主要な経営指標としている。ROICは事業を収益性と効率性の両面から捕捉するものであり、事業部は目標のROICを実現するために努力を重ねるわけであるが、その目標に届かない状態が続いている。事業撤退はそのタイミングが重要であるため、経営指標の設定にとどまらず、撤退基準やルールを明確にしておき、経営陣の意思決定にブレがないような仕組みを構築しておくことが重要であると認識した。

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「安心」「誇り」「夢」
これは村田社長が社長就任に際して、15年先の未来に向けて村田機械(以下、同社)のあるべき姿に言及したキーワードだ。高収益、ナンバーワン、オンリーワンなど経営者視点の言葉ではなく、社員目線の言葉から会社のあるべき姿を描いた点に特に共感を覚える。経営トップの思いは確実に社員に浸透され、社員の腑に落ちる必要があるが、夢を持つことがナンバーワン、オンリーワンの事業や製品を育み、それが結果的に高収益な企業体質につながり、社員が安心して働くことができる、という好循環がストーリーとして認識できるところに同社の強さがあるのだと理解した。

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「ジョーカー」、組織の縦と横
事業課題の一つとして、国際化が指摘されていた。その中で特にフォーカスしたい点は同社が求める人材像と縦と横の軸を持つ組織構造だ。 求める人材像はトランプの「ジョーカー」(=Internationalization)に喩えられていたが、これは「何にでもなることができる」という人材の柔軟性や粘り強さを意味している。組織の縦軸は事業であり、組織の横軸は機能である。「ジョーカー」とは自分の持つ専門性をどの事業でも、どの地域でも発揮することのできる機能のスペシャリストである。こうした構造は多事業を展開する同社にとって、事業間のシナジーが生み出しやすく、同時に環境の急変による事業ポートフォリオの組み換えにも効果的であると考えられる。当社でも同じような縦と横の組織構造を有しているが、縦割りの事業部軸が強く、事業横断・地域横断の横軸、すなわち機能軸が弱いのではないかと危惧しており、大きな示唆となった。(O.A)

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