戦略経営の実践(経営者リレー講義)第8回

2020年11月14日(土)

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特殊講義:戦略経営の実践
濱田 初美 教授
特別講師
TOTO株式会社 相談役(前代表取締役会長)
張本 邦雄

TOTOの変革と挑戦

立命館大学 大学院 経営管理研究科(RBS)は、TOTO㈱相談役(前代表取締役会長)の張本邦雄氏を招聘し「戦略経営の実践」の特別講義を行った。院生レポートを中心に当日の講義内容を紹介する。

TOTO 相談役 張本様の講義を拝聴し、創業100年を超える伝統企業がどのような志で設立され、如何にして衛生陶器分野でトップシェアを堅持し、今日まで躍進を続けてきたのかを深く認識することができました。私が特に感銘を受けた点を以下に記述いたします。

 

「リモデルimg02」市場の開拓
国内の新築住宅着工件数は1996年をピークに減少傾向が続いていますが、同社はそれ以前より、いち早く新築住宅市場のピークアウトを予測し、主戦場を「リモデル」市場に転換されました。この戦略転換が、衛生陶器分野のマーケットリーダーとしての盤石な地位確立に繋がり、今もなお市場を牽引されていることを改めて認識することができました。
ご高話の中で、「リモデル」市場の成長可能性を張本様ご自身が確信するために、徹底的に市場分析を行ったというエピソードをご紹介いただきました。正しい戦略・戦術なのか、進むべき方向は間違っていないか、私自身も日常の仕事の中で迷いが生じることがあります。上司や部下と自ら立案した事業戦略(企画)を共感し、実行に繋げていくためには、課題の本質部分を深掘りし、これを視覚化(数値化)させることが重要であると考えます。そのためには、自分の目で真実を確認し、自分自身が腹落ちしなければ、リーダーとして他者を納得させることはできないと、改めて認識いたしました。
また、YKKAPと大建工業との戦略的なアライアンスについてもご紹介いただきました。これは、「トータルの最適を追求し、最適なリモデル空間を顧客に提供する」ことを目的としたものであるとのことでした。三社それぞれの強みを結集させることで、柔軟かつスピード感ある価値創造が可能となり、市場を席巻するほどの強固な提携関係が築かれていると感じました。まさに、社是の一節、「協力と発展」の実践であります。このことからも、創業当時の高い志を経営の根幹に据えられ、今日まで脈々と受け継がれていることに大変感銘を受けました。

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全社最適を実現するための仕組みとグループ一体経営の実践
事業セグメント単位の縦割りの業務運営を改め、横串の通った「全社最適」の仕組みについてご教示いただきました。マーケティング・サプライチェーン・マネジメントリソースなどの5つのタスクについて、事業単位ではなく全社的に俯瞰した形で最適な在り方を検討することで、効率的・効果的な資源投下が実現でき、また、社員一人一人も自部門だけでなく他部門も自分事として捉えることとなり、組織一体感の醸成にもつながると感じました。
真にグループ一体となった経営を実現するために、会計上の子会社を「グループ会社」と呼ぶことで親子(主従関係)ではなく兄弟(並列関係)であることを全社的に意識づけされたこと、連結ベースの業績に連動する賞与基準をグループ全社で統一されたこと、そしてグループUNIONの結成についてご紹介いただきました。特に、賞与の支給基準の統一化は、グループ会社それぞれの責任感を高め、互いに切磋琢磨する企業文化・風土の醸成に繋がるのではないかと考えます。この施策は、グループ一体的に成長していくための力強いエンジンとなっていると強く感じました。
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最後に、TOTO並びにグループ各社が、今後も「リモデル」分野でグローバルに躍進を続けられることをご期待申し上げるとともに、張本様の益々のご活躍を祈念申し上げ、ご講演のお礼とさせていただきます。(O・I)

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