戦略経営の実践(経営者リレー講義)第6回

2020年10月31日(土)

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特殊講義:戦略経営の実践
濱田 初美 教授
特別講師
株式会社TBSホールディングス 取締役会長
武田 信二

民間放送局の未来

立命館大学 大学院 経営管理研究科(RBS)は、㈱TBSホールディングス代表取締役会長の武田信二氏を招聘し「戦略経営の実践」の特別講義を行った。院生レポートを中心に当日の講義内容を紹介する。

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「若者のテレビ離れ」と言われて久しい昨今、最大の収入源であるテレビ広告が2006年にピークを迎える中、当時は多様化するコンテンツとの接点をいかに作るかが貴社の大きな課題であったと認識しています。この課題に対し、放送と通信の融合を加速させ、先端技術等を活用した新たなコンテンツの市場拡大にも取り組まれるなど、将来を見据え挑戦し成長し続ける御姿にはいたく感銘するとともに、社会に欠かせない機能であることを改めて認識しました。
当会では、貴社の系列局「SBS静岡放送」との取引があり、以前、新たな金融商品をPRすべく、媒体や手法等のご提案を依頼しました。テレビのみの提案を想定しておりましたが、当会を調査・分析のうえ、関連あるテレビ番組を中心にしつつ、グループのラジオ・新聞に加え、広告代理店と連携したイベントやWEB広告の出稿等、限られた予算でのPR効果の最大化を目指した素晴らしい提案を頂戴したことは、現在でも記憶に残っています。

会長は、貴社には働きたい職種を明確にした志の高い社員が多く、やや縦割りの文化であるとおっしゃられました。この社風が伝統として根付き、その道のプロであるリーダーと部下との強固な信頼関係を築くとともに、近年では企業内大学を開校させるなど、様々な職種との融合によりブランド価値を高める人材育成に取り組まれ、組織の活性化に繋げていることが、貴社の大きな成長に繋がっている所以だと推察しました。

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また、貴社では常に視聴者目線での妥協を許さない質の高い番組制作にこだわられており、正に高い組織力・チーム力を背景に視聴者ニーズを捉えて行動されている御姿は、顧客本位の営業活動を方針とする当会においても同様に目指す姿だと改めて強く感じたところです。
貴社の財務内容に目を移すと、「政策保有株式の縮減や積極的な株主還元」を実施される中、今後も中長期的なバランスシートスリム化や、資産売却を原資とした株主還元への積極姿勢を継続していくことが伺えます。
一方、僭越ながら、本業の収益力強化に繋がる内容ではないことに加え、他社との競合やグローバル戦略では大きな存在感を発揮できていないことは課題だと認識しています。収益力強化に向けては、放送と動画配信の連携強化・進化や最先端テクノロジーの事業化推進など新たな取り組みを拡充・加速させ、将来的に国内市場が成熟する中、グローバル市場には大きな成長余地が残されていると思われます。グループ全体におけるシナジー効果の最大化を図り、貴社が掲げられるブランドプロミス「最高の‟時”で、明日の世界をつくる。」に向けて、大きく飛躍されることを心よりお祈り申し上げます。

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貴社では、食や農をテーマとしたテレビ番組やドラマ等を通じ、農業の魅力を幅広く発信されており、私のJAグループとも連携して日本の農業を盛り上げていければ幸甚です。私も外部機関との連携や知見を活用しつつ、常に将来を見据えた事業変革を実践し、当会の持続可能な経営基盤の確立・強化に向けて業務に邁進していく所存です。この度は貴重なご講義を拝聴させていただき、誠にありがとうございました。(N・N)

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