戦略経営の実践(経営者リレー講義)第4回

2020年10月17日(土)

img01
特殊講義:戦略経営の実践
濱田 初美 教授
特別講師
KDDI株式会社 代表取締役会長
田中 孝司

激変する市場環境におけるKDDIの競争戦略

立命館大学 大学院 経営管理研究科(RBS)はKDDI㈱代表取締役会長の田中孝司氏を招聘し「戦略経営の実践」の特別講義を行った。院生レポートを中心に当日の講義内容を紹介する。

img02

 

「知識」とは
個人の能力とは、(経験+知識)×論理的思考で表される。経営トップに必要なことは、「未来予測」であり、経験より確かな「知識」こそが、未来予測をガイドし、判断に悩んだときに自信を与えてくれるとのお言葉が非常に印象的でした。スタンフォード大学留学時代に寝る間も惜しんで勉学に励まれたことや、社長就任当時や改革時など、たとえ未経験の分野であっても、忙しい合間の時間で自ら知識を習得し、実行可能な戦略にまで落とし込まれている点など非常に感銘を受けました。「知識」をアップデートし続け、結果を残してこられたからこそ、「知識」への絶対的な自信に繋がっているのだと感じました。
KDDIの企業文化と改革
KDDIほどの大企業には珍しく、中小企業のような強烈なトップダウンであるが、部下は上司に迎合するのではなく、常に利益成長を是とする文化がある、との会長のお言葉が印象的でした。良くも悪くも中小企業img03体質の文化は、トップの指示であれば社員も従うが、反面、経営トップ次第で企業のポテンシャルが決まってしまう脆さがあるように思えます。さらに最終的には実績で評価されるため非常に合理的な文化ともとれ、トップにかかるプレッシャーがどれほどのものか正直のところ全く想像がつきません。
社長に就任された当時は、当時の最新規格である4Gへの対応の遅れから、年々業績が悪化しており、社員たちの方向性はバラバラな状況でしたが、トップ自らが意識改革・変革の必要性を発信し続け、陣頭指揮をとり、戦略(意識改革、営業モメンタムの回復、3M戦略)を実行し、結果を出されてきたことは驚嘆するばかりです。改革時、部長クラスとのベクトル合わせのため毎月会議を実施され、また会長自らが膨大な量の資料を準備しプレゼンされ、また「営業モメンタムの回復」では、業界では失敗することが当たり前と思われていたバンドル販売にチャレンジされていますが、これも絶え間ない知識の習得から仮設検証を繰り返し、最終的にチャレンジされた結果なのだと想像します。会長自らが陣頭指揮されてきたことで、周囲に改革の本気度が伝わり、また内容の説得力にも繋がっていたのではないかと思います。

img04

 

自らの振り返り
会長のお言葉の中で、「脳は同じことを繰り返していると快楽を感じる。1カ月前から変化がなければ、現状維持病」とのお言葉がとても印象的で、私自身の行動や意識も変える必要があると感じました。「大きな波を捉える習慣」として、将来予測のために時間をレイアウトすべきで、自社業界および隣接業界の未来予測レポートの重要性・有用性についての示唆をいただきました。私たちは過去のデータや傾向、経験から未来を予測しがちですが、今後訪れるデータ社会やVUCA時代の未来は過去の延長線上には無いと考えます。自社は保守的な文化が強い企業で、私は経営層からは遠い現場の一従業員ではありますが、この度の田中会長の講演を通じて、若手や中堅社員である自分たちこそ自社の将来を真剣に考えるべきであり、視座を高くすべきと意を強く致しました。(O・S)

img05