戦略経営の実践(経営者リレー講義)第1回

2018年9月29日(土)

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特殊講義:戦略経営の実践
濱田 初美 教授
特別講師
塩野義製薬株式会社 代表取締役社長
手代木 功

持続的な企業価値創造を目指した経営の実践

立命館大学大学院 経営管理研究科(RBS)は、塩野義製薬㈱代表取締役社長の手代木功氏を招聘し、 「戦略経営の実践」の特別講義を行った。受講生レポートを中心に当日の内容を紹介する。

 手代木社長の約90分間のプレゼンテーションは、洗練されて非の打ち所がない内容であった。ほぼ完璧にまとめられた資料で、これまでの塩野義製薬の取り組みを非常にわかりやすくご説明いただいたのでcurriculum-management-180929-hp-02、講演内容に強い納得感が得られた。
一方、一つ一つの取り組みを実際に考えて、行動に移して成果に繋げるためには、多大な労力を要したであろうと思う。有効な戦略を思いつくこと自体は、一定の能力を持った人にとって、それほど難しいことではないのかもしれない。しかし、自分自身のことを強く信じることができなければ、それを実行することは困難である。自信を持つということは、異なる意見を持つ他者よりも自分が正しいと思えることであり、それは幅広い知識/知見/視座を持った上で、誰よりも考えているという自負を持つことだと思う。
社長塾の主目的として挙げられていた『全社視点(他バリューチェーンの理解)』、『Toughness(現業のパフォーマンス+厳しい課題)』、『学び続ける姿勢(社長塾リターンズ)』は、まさにそういった自負を成長させるために必要な要素であると理解した。

手代木社長curriculum-management-180929-hp-03は、方針を決定する上で、自らで獲得した知識や情報をベースとして、世の中には存在しない基準を自らで作って決断されているように思った。現在私が勤めている会社も歴史が長いため多くのしがらみが存在し、変革を妨げる要素が多いことは容易に想像できる。今回の講演では、そんな状況下であっても、自分が正しいと思えることを行動に移して会社を改革することは可能であるという事例を示していただいた。手代木社長ほどの能力は無いが、自分ができることを全力で考えてやっていけば、会社を変えることができる可能性はあると思うことができた。

質疑応答の中で、お話いただいた後継の話は、非常に興味深かった。正直、これだけの功績を残された手代木社長の後継者は、相当荷が重い。後継には、“情報やデータ等をベースにして、次に必要なものは何か?何をするべきか?を考えられる人”、“その時点では認識されていない概念をクリスタライズできる人”が望ましいということであったが、それを実現できる人は、非常に稀な人材であるように思う。

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仮に存在したとしても、それを従業員や様々なステークホルダーに説明して納得させる能力も同時に必要となる。果たしてそれだけの人材が本当に見つかるのだろうかというところに少し懸念を感じた。現実的に完璧な後継指名はなかなか難しいように思う。
後継候補に社長の座を譲った後も、当分の間は手代木社長が会長となり、支援を続けていくスタイルが望ましいのではないでしょうか。(W・O)

 

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