戦略経営の実践(経営者リレー講義)第7回

2016年11月12日(土)

curriculum-management-161112-hp-02

特殊講義:戦略経営の実践
濱田 初美 教授
特別講師
東レ株式会社 代表取締役社長
日覺 昭廣

日本的経営を貫き、グローバルで勝つ 東レの経営方針と実践事例

以下は、当日の講義風景と講師の記念色紙、受講した院生のレポートです。

『大学院を修了後大きなプラント作りをしたかったため東レに入社した』という日覺社長は、自らの現場経験を元に、文化の異なる欧米の現場を管理する立場となっても、自ら工具をもって工場を回り現場の大切さを社員に伝道され現場主義を徹底されてきた。東レでは、この徹底した現場主義と競争力のある革新的技術の追求により、革新的なものづくりを推進している。
東レの競争力の源泉は、この現場主義により技術を評価し、その技術を徹底して突き詰める企業文化にある。日経ビジネスの日覺社長の記事を拝見したが、主たる事業を展開している繊維産業では、早くから中国などのアジアメーカーの低価格攻勢があり国内産業が空洞化すると言われていた中、現場をまわり競争力の源泉を見つけ繊維事業縮小の判断をせず、今も東レを支える主たる事業として成長を継続している。

curriculum-management-161112-hp-05

それが50年も継続し続けた炭素繊維への徹底した技術進化の挑戦であり、極限の細さと強さという一見相反する特徴を同時に成し遂げるという繊維の開発に至っている。このような徹底した研究・開発を長期にわたって継続するために、短期的に採算が取れるように技術を様々な用途に適用し技術を磨き上げ続けており、その選定も洗練されている。
市場としてはそこまで大きくはないにせよ、ゴルフシャフトやテニスラケットの軽量化かつ強度を増したことは、利用者には大きなインパクトを与えたに違いない。また、このような技術を成し遂げるには、パートナーの存在も不可欠で、パートナー企業が東レの技術者を刺激し、自社だけではなしえない高い品質の成果物を作り出す。
ユニクロからの技術者の常識を超えた要求にこたえるため技術を追求し、1万回以上の試作を経て爆発的ヒットを記録、世界中で愛用される「ヒートテック」の開発につながった、というのはその1例である。東レの徹底した技術追求はこのような魅力的なパートナーも惹きつける。

curriculum-management-161112-hp-01
更に、東レは既存の技術を追求するだけでなく、新たな技術創出にも積極的に取り組んでいる。研究所では、研究テーマとして設定する前に、アングラ研究としてそこに20%までの時間を費やすことを許容しており、それが新しい技術の種となるとともに、技術者のモチベーションアップにもつながる。東レの全ての研究・技術開発を統括する技術センターで分断されていない研究・技術開発体制を組み、シナジーを生みだしている。また、オープンイノベーションを推進し、異分野の技術や知見が融合し、新しい技術を作り上げている。
東レは今後も日本のものづくりの源泉である現場主義を徹底して技術を洗練させて新たな技術や価値を創出し、日本の産業を牽引するとともに、日本のものづくりのすばらしさを広めていってくれるものと期待する。(F・K)

curriculum-management-161112-hp-04