戦略経営の実践(経営者リレー講義)第2回

2016年10月8日(土)

curriculum-management-161008-hp-02

特殊講義:戦略経営の実践
濱田 初美 教授
特別講師
マツダ株式会社 代表取締役会長
金井 誠太

マツダのブランド価値経営

以下は、当日の講義風景と講師の記念色紙、受講した院生のレポートです。

 マツダは、フォード傘下時代に定めたブランド戦略「zoom-zoom」によって、自らの生きる道を定めた。だからこそ、その道で勝つために、あらゆる側面においてベストを尽くした車をつくる。やることとやらないことを明確にし、定めたところで戦い結果を出す姿勢は、ぶれないものづくりの軸を明確に示す。そのために必要な経営として、「ソロバン」だけでなく「ロマン」も両方が大事と金井会長はお考えになり行動された。ここには、企業(とりわけ製造業)の経営に必要な要素が凝縮されていると感じる。技術者であろうと、管理系であろうと、およそ企業に勤める「人」を動かし、底力を引き出そうとすれば、特に「ロマン」の側面が重要である。人が力を発揮し成長するのは、将来に希望を持ち、夢を語り合えるような環境の中で、のびのびと達成すべき挑戦課題に立ち向かうときだと思う。ご自身が技術者のバックグラウンドをお持ちであり現場を知っている、そして、マツダの歴史と共に歩んでこられた金井会長だからこそ、人事施策も含めてその指揮を執ることができたのだと言える。

curriculum-management-161008-hp-03

では、さらにこの先、マツダブランドの提供価値である、全ての顧客に『走る歓び』と『優れた環境安全性能』をもたらし、より進化させるために、マツダが取り組むべき課題は何か。私の答えは、走る歓びを知らない車好き以外の層への訴求、すなわち、「車(特にマツダの)に乗りたくなる人を増やすこと」である。生活に必要で乗る人やそうではなくても既に車に乗っている人はその歓びを既に知っている、あるいは現状の延長で知ることができるため、現状のアプローチで良い。しかし、私のように車を所有したことがなく、乗る機会もない者※にとっては、デザイン(技術も含めて)がどれだけ優れていても、なんとなく敷居が高く、例えばCMを見てもあまり心を動かされない。優れた技術で最高品質の車をつくる、これは日本の得意技であり、マツダはこれに加えて、デザインの良さでコアなファンを掴む。市場はそれを求めているか、メーカー発信になっていないか再確認し、「いいものをつくる」ことだけに固執せず「顧客」を広くとらえることが、マツダブランドをさらに強くすると考える。コアなファンに支えられるブランドだからこそ、新たなファンを作って欲しい。シェア2%を維持・拡大する鍵は、実は「車に乗っていない(運転していない)人」が握っているのではないか。乗りたくなるデザインと技術で、車好きに誘導する、そんなブランドであっても良いのではないだろうか。

curriculum-management-161008-hp-01

 マツダといえば走る歓びを感じさせてくれるブランドだが、一歩進んで、その歓びを教えてくれるブランドにする。そのようなブランドは他にない。私がマツダの歴史やものづくり、経営を知ったことがきっかけで「マツダの車なら運転してみたい」と思ったように、伝え方や巻き込み方(教習所のペーパードライバー講習と組んだ試乗イベント等)の新たなアプローチに期待したい。マツダなら実現できると確信する。(U・R)

curriculum-management-161008-hp-04