戦略経営の実践(経営者リレー講義)第5回

2016年10月29日(土)

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特殊講義:戦略経営の実践
濱田 初美 教授
特別講師
日本製紙株式会社 代表取締役会長
芳賀 義雄

日本製紙 二つの危機を乗り越え 明日への軌跡を描く

以下は、当日の講義風景と講師の記念色紙、受講した院生のレポートです。

この度は貴重なお時間を私共RBS一同に頂けましたことを深謝申し上げます。自然の恵みである「木」を大切にすることで、事業創造を豊かにしセルロースナノファイバーという新しい分野へ貪欲に挑戦される姿が、現場を大切にする芳賀会長の想いであると深く感じた次第です。

この度の講義では「日本製紙、二つの危機を乗り越え明日への軌跡を描く」と題し講演いただきましたが、二つ目の危機である東日本大震災からの復興談話は感慨深いものでありました。石巻工場での復興に関するDVDは工場で働く従業員の想いが伝わる素晴らしいものでした。会社とは家族のことを守る大切な場であります。その会社を想うということは、家族を想うことと何も変わりません。石巻工場の皆さんは、大津波という未曾有の災害で会社の大切さを改めて知られたのだと思います。

curriculum-management-161029-hp-03芳賀会長はトップとして果たすべき役割を解りやすくご説明していただきました。先ずは自分の目で見ることで判断や決断が出来る。そしていつまでに何をするかという明確な目標を決めると仰っていました。様々なケースで目標設定や期日設定は行われていると思いますが、町が崩壊し自社工場も崩壊に近い状況での目標設定は誰しもが経験することではありません。過去のデータやご自身も体験されたことのない状況では通常、適切な判断はできないでしょう。しかし、奇跡的にも死者が出ず設備が復旧できる状態であったことが芳賀会長に適切な判断をさせてくれたのではないでしょうか。人が生き設備が生きることで、石巻工場は復興へと向かうとてつもないパワーを生むことができたのです。
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ご高話の中で、震災ではお金の重要さを強く仰っていました。工場被災で資金はどのくらい必要なのか。従業員の給与や復興を手伝ってくれる人々などの手当てはどうするのかなど、必要となるお金を段取りするのも社長の仕事だと仰っていました。銀行の頭取とも交渉し1000億の枠取りをされました。これは日頃から信頼関係のあるお客様をはじめとしたステークホルダーの存在が大きかったのでしょう。「復旧したら必ず御社の製品を使いますよ」という声が銀行を動かす源泉であるはずです。トップとしてお客様をまわり、状況報告と復興への強い意志を伝えることで、従業員は一丸となります。芳賀会長の現場に対する想いが工場を再生する原動となり、芳賀会長のお人柄が現場で働く従業員の心を動かしたことで日本製紙は見事に復興を果たしました。

現実を受け止め、逃げない。現場の重要さを改めて教えていただき、経営者の責任と心構えを感じ取れた貴重な機会でした。この度のご高話に感謝申し上げるとともに、貴社の益々のご発展を祈念いたします。(K・I)

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