戦略経営の実践(経営者リレー講義)第2回

2008年10月04日(土)

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国際経営特殊講義:戦略経営の実践
濱田 初美 教授
講演者
福田金属箔粉工業(株) 代表取締役会長
福田 健

老舗の弱みと強み

以下は、当日の講義風景と講師の記念色紙、受講した院生のレポートです。

福田会長の講演から学んだこと

本日はご多忙の中、貴重なご講演を賜り有難うございました。創業以来300有余年の歴史を有する伝統企業であり、現在も成長を持続されている福田金属箔粉工業株式会社の 創業一族である福田会長のお話を大変興味深く拝聴させていただきました。

印象深かったのは「ノウハウは道具に宿っている」、したがって「製造設備の外注・エンジリアリング部門のカーブアウトが企業の衰退を招く」というご見解でした。特に 貴社が300年もの長い間繁栄し続けることが出来たのは「製造設備の自社開発」にあるとおっしゃっていた点は非常に印象深かったです。それは私が現在所属している企業との 比較考量で気づかされる点があったからです。私が現在所属している企業はメーカーで、複数の事業部門から構成されるコングロマリット企業です。その中でも特に業績不振 部門は製造機器の内作のみならず製造そのものを外注しております。したがって会長のお話は非常に耳が痛く、メーカーとしてのあるべき姿を改めて考えさせられました。

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他には「無駄の徹底排除はマーケットへの対応の遅れに繋がる、型破り・ムダムリの余裕は次の製品を生み出す糧」との会長の信念です。機械的な合理化は企業の生命力を 奪うとのご見解ですが、そのご見解を生み出せる背景として株式上場企業と株式非上場企業の差が大きく関係しているのではと思いました。私が現在所属している企業は株式 上場企業であり、利益捻出に余念がありません。したがって生産合理化・効率化をストイックに追求しております。 生産合理化・効率化の追求だけが必ずしも次の製品を生 み出す糧の障害になっているとは思いませんが、その一部にはなっているような気がします。一方、 貴社は一時期、株式上場を検討されていたとの事ですが株式上場のメリ ットデメリットを総合的に勘案され最終的に株式非上場の判断を下されたとの事。貴社の製品開発に対する鷹揚な考え方は株式非上場ゆえの特権であり贅沢ではないかと感じ ました。

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一方で伝統産業の意識を捨てることが会社の課題であり、その解決方法を科学的手法に求めていらっしゃるところに、伝統だけでは会社経営は成立しない、環境の変化に対応できるもののみが生存を許可される「適者生存」を痛感致しました。ボーダーレス化が進展する時代の中で、自分がとるべき行動を考えざるを得ませんでした。

現在私は企業経営者の立場にあるわけではありませんが、背景の異なる多数の企業の経営方針をその経営者から伺うことは将来必ず何かのプラスに働くと思っております。 そうした意味では本日は非常に有意義な時間でした。有難うございました。  (M1 H・H)