戦略経営の実践(経営者リレー講義)第5回

2014年10月25日(土)

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国際経営特殊講義:戦略経営の実践
濱田 初美 教授
講演者
株式会社三越伊勢丹ホールディングス
代表取締役会長
石塚 邦雄

百貨店の戦略と経営マネジメント

以下は、当日の講義風景と講師の記念色紙、受講した院生のレポートです。

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人間味のある経営
石塚会長の講義をお伺いして印象に残ったことは、三越伊勢丹ホールディングスは顧客中心のサービスを重視した「ハートが熱い」企業であるということである。私自身、「高い」「年配者向け」という先入観から百貨店で買い物をすることが少ない。しかし、今回の講義の機に当社について調べてこのような印象を持った。
講義を聞いた後、JR京都伊勢丹店に行ってみた。フォーマルウェアを購入したいと思っていたがやはり高い。学生の身で仕送りとアルバイトで生活している自分にとってはすぐに購入できる価格ではなかった。スタイリスト(=販売員)に声をかけられたので事情を説明すると、セールの時期や良い品の選び方を教えてくれた。購入できず申し訳ない気持ちがあったが「高い買い物なので慎重に選んでください。」「いいモノはいくつになっても使えますのでせっかく買うならいいモノを」という言葉を聞き、販売につなげるよりもお客に気持ち良くサービスを受けてもらうことを優先していることを実感した。
このような気持ち良い接客の背景には従業員の販売の質がある。当社では販売の質の可視化や働く環境の改善を行いスタイリストの成長を促進し、顧客満足度の向上、売上拡大へと繋げていた。
ここで私が気づいたことは、このような質の高いサービスを若者世代が知らないというこだ。若者が百貨店で買い物する機会が少ないということは、レベルの高い接客を受けたことがないことを意味する。「百貨店で買い物をする」という経験が少ない世代が10年後、金銭的余裕ができた時に買い物する場所の選択肢として百貨店を選ぶ可能性が低くなるのではないか。今回のような気持ち良いサービスを受けたことが百貨店独自の魅力であると感じた。「百貨店で買い物をする」という体験が買い物方法の一つではなく、休日の過ごし方の一つとなるような戦略が今後必要ではないかと思う。

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規模の拡大=競争力
「和食」が無形文化遺産に登録されたように「日本の百貨店」が世界で有数の心地よいサービスの場所になっていってほしいと考える。その為には世界での競争に生き残る競争力が必要であると考える。
近年、経営統合が盛んに行われる理由として「せざるを得ない状況にある」ということを知った。少子高齢化と生産人口の減少により日本での売り上げ拡大には限度がある。また、競争舞台が世界へと広がり、売上やシェアは国内が基準ではなく世界と比較しなければ企業として生き残れないのである。
curriculum-management-141025-HP-05経営統合の目的は競争力の強化であり、その為に規模の拡大が必要ということを学んだ。2008年の経営統合において、伊勢丹を選定した理由は「お客様に寄り添った百貨店」という原点が三越と同じであったためである。当社はお取引組先任せの失敗からお取組先と共同し「自分たちでモノを売っていく」経営へと変革した。私は今後の当社は「日本の百貨店」となっていくだろうと予測する。顧客起点の考え方は環境の変化があっても大切にされる点であるが、すぐに定着するものではない。当社はそれが既に作られている。また、今、オールジャパンの推進という追い風も吹いている。そういったことからも、考え方を共有できる百貨店とは統合し更なる競争力を身につけ、世界で「人間味があるサービス=日本の百貨店」と言われる存在になってほしいと願う。(H・M)

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