戦略経営の実践(経営者リレー講義)第4回

2018年10月20日(土)

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特殊講義:戦略経営の実践
濱田 初美 教授
特別講師
日本たばこ産業株式会社(JT) 代表取締役社長
寺畠 正道

JTの変革とグローバル化

立命館大学経営大学院 経営管理研究科(RBS)は、JTの代表取締役社長の寺畠正道氏を招聘し、 「戦略経営の実践」の特別講義を行った。受講生レポートを中心に当日の内容を紹介する。

多くの日本企業がクロスボーダーM&Aにおいて、失敗するケースが多い中、JTはたばこ事業におけるM&Aを次々に成功させ順調に事業を拡大し続けている。その秘訣は何か。(失敗する他社との違いはどこにあるのか)

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①グローバル企業への転換、グローバル競争を勝ち抜くためのM&A
・経営理念は「4Sモデル」の追求。「お客様を中心といて、株主、従業員、社会の4者に対する責任を高い次元でバランスよく果たし、4者の満足度を高めていく」
・たばこ事業におけるクロスボーダーM&Aは『成長の時間を買う』手段と位置付け。あくまでも買収は手段。買収の成功は統合の成功である。
・3つの市場「製品・サービスの市場」、「人財市場」、「資本市場」での競争力にフォーカスしたM&Aを行う。
②経営理念「4Sモデル」に基づいた中長期的事業投資
・グローバルなたばこ事業について、「既存市場での持続的成長」、「新興市場を中心とした地理的拡大」、「RRPでの成長加速」の3つを戦略の柱としている。
③グローバル経営と自立・自律経営
・グローバル経営の基盤確立「強力なリーダーシップの発揮」、「日本人に拘らない人材登用」、「ルールと価値規範によるグループ会社のガバナンス」、「欧米・日本双方の強み融合」、「対話の徹底」。
・ガバナンスを前提とした自立・自律経営「責任権限の明確化」、「徹底した見える化」、「主体性・オーナーシップマインドの鼓舞(箸の上げ下ろしまで言わない)」。

JTは、たばこ事業を中心に約20年前から海外の大型買収を成功させ、日本におけるクロスボーダーM&Aの先駆者的存在である。
寺畠社長の講義を聞き、JTにおけるM&Aの強みは、①買収企業の組織・人をスピーディーにJTグループに融合(統合)させることに最大限注力していること、②M&Aを主体的に行っている子会社JTIにJT本社から大幅な権限移譲を行っていることであると感じた。
JTは、グローバル企業としてダイバーシティを重視し、優秀な人材は登用しガバナンスを通して権限を大幅に現場(JTI等)に移譲している点が、日本本社で重要事項をグリップしようとする他の企業(失敗する企業)と決定的に違うと感じた。
また、経営理念「4Sモデル」で『お客様』を中心に置くことで、グローバルな市場においても社員がブレることなく、グループの目標に向かって進めるよう理念を共有・定着させていることは素晴らしい。(簡単にできることではない。)社長自身が、国内外の各事業所に出向き、現地社員とのコミュニケーションを非常に大事にしていることは大変興味深く感じました。
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私自身、企画部門在籍時に“現場の意見は細かい文句が多すぎる”と感じることがあり、現場部門とある程度距離を置くようにしていましたが、講義で社長のお話を聞き、反省しているところです。組織の最大の資産は「人財(社員)」であり、価値観(理念)共有のためのコミュニケーションの重要性を改めて思った次第です。

貴重なお話を本当にありがとうございました。(H・T)

 

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