戦略経営の実践(経営者リレー講義)第7回

2018年11月10日(土)

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特殊講義:戦略経営の実践
濱田 初美 教授
特別講師
AGC株式会社 取締役会長
石村 和彦

AGCから見た液晶産業とその背景にあるもの

立命館大学 大学院 経営管理研究科(RBS)はAGC㈱取締役会長の石村和彦氏を招聘し、「戦略経営の実践」の特別講義を行った。受講生レポートから、講義内容を紹介する。

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液晶パネル産業におけるガラスメーカー視点での変曲点の話は、非常に新鮮であった。特に、某社の薄膜化戦略(新商品を展開する際に、基板厚の標準を変更することにより既存窯で新製品を作る余裕を捻出)によって、液晶パネル向ガラス基板供給過剰になり価格下落したとのお話から需給バランスの重要性を再認識することができた。

市場において影響力を持ち、高い利益率を確保するためには、シェアNo.1になることが不可欠なのだ。また、シェアを獲得するためには、講義終盤でご教授いただいた6項目の要素を考慮した上で、独自戦略を持たなければいけないということを、今回の講義を通して学ぶことができた。石村会長が日本の液晶産業の歴史を振り返り、50社以上の工場に自ら足を運んで見出された“製造業を成長させるための要素”が以下の6つである。

1.世界に先駆けて開発し、その商品を特許などによって権利化する。
2.競合より早く、顧客要求する商品を上市する。
3.他社に先駆けて大型投資を行い、大量の生産能力を確保する
4.ニッチな分野で、ビジネスを展開する。
5.販売やアフターサービスも含めて、ビジネスを強化する。
6.他社にはない、優れた『生産システム』を持つ。

curriculum-management-181110-hp-03我社がメーカーとして一定シェアを確保することができた理由を振り返ると4と5が当てはまる。特定機種に特化することで性能を向上させ、製品納入後のプロセス課題解決に積極的に協力することで、顧客からの信頼を得られていたと推定できる。
しかし、今回のご講義を聴いて、今後我社が更に成長していくためには、“2.”の要素を獲得することが重要なのではないかという考えを持った。残念ながら我社には、某社のように、クリアできるかもわからない顧客要求に対して『ハイ、やります』とすぐに言えるような技術者や営業はいない。
競合より早く顧客が要求する製品を上市するためには、顧客の真意をいち早く察知し、開発を進める必要がある。そのためには、日頃から顧客と積極的で前向きなコミュニケーションをとらなければならない。

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製造業において、顧客要求を新しい製品を生み出すトリガーにするためには、技術を理解できる社員(≒技術者)が顧客と対峙することが望まれる。今後、私は技術者として、そのような人材になるように行動していきたい。自らで実践することで、“2.”の有効性を社内で確立することができれば、企業文化変革を担える可能性がある。
確かに企業文化を変えることは難しいのかもしれないが、影響力の届く範囲を少しずつ拡げていければ、変えることができると信じて頑張っていきたい。(W・S)

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