戦略経営の実践(経営者リレー講義)第3回

2018年10月13日(土)

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特殊講義:戦略経営の実践
濱田 初美 教授
特別講師
日本郵船株式会社 代表取締役会長
工藤 泰三

物流から見た日本・世界の経済

立命館大学大学院 経営管理研究科(RBS)は、日本郵船㈱代表取締役会長の工藤泰三氏を招聘し、 「戦略経営の実践」の特別講義を行った。受講生レポートを中心に当日の内容を紹介する。

貿易立国として存続の危機にある日本の現状と課題を幅広い視点から認識することができました。少子高齢化社会など大きな構造変化によって未曾有の環境に突入する日本。世界経済の中での地位が大きく低下しつつある日本。厳しい環境変化の荒波の中で、長年にわたり競争を勝ち抜いてきた先見性高い日本郵船トップからの危機感に満ちたお話に、強い危機感を感じるとともに背筋が伸びる思いがしました。

 

 

世界の潮流は、輸出入の形(量・方向)に現れてくる。物流から経済が見えてくる理由はここにあると思いました。確かに、豊かさを運ぶ物流は、経済の大動脈であり、重要なインフラであるとともに、お互いcurriculum-management-181013-hp-02の経済力の強さを反映しており、そこから見える世界経済の構図は、経済成長の中心が欧米から東アジアへ移りつつあるなど、ここ十数年で一変していることが分かります。世界を俯瞰し、潮流を見ることができる。これも日本郵船が物流の世界で存在感を示し続けられる要因の一つだと感じました。

 

環境の変化には、循環的要因や構造的要因など奥の深い課題が潜んでいます。この度の講演では、日本郵船の重職を担われている工藤会長が日本経済や世界経済の背景にも精通しておられ、見識の広さ・深さに感服致しました。自動車業界など製造業の生産拠点シフト、新興国の成長、労働力の枯渇、ASEANの躍進、農業の成長可能性、Eコマースがもたらす脅威と変革。分野、規模、地域、特性は様々ですが、いずれも、経営にとって脅威にもチャンスにもなり得ます。工藤会長の見識の広さ・深さは、リスクにもチャンスにも備える日本郵船の経営者としての責任感と心構えによるものだと推察した次第です。と同時に、新たなビジネスチャンスを捉えるのに十分な準備ができているところに、日本郵船が長い歴史の中で競争に勝ち残ってきた強さの秘訣を垣間見た気がします。

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あらゆる場面で数字を示し、明快で分かりやすい説得力ある説明をしていただきました。経営者が多くの社員と理念やビジョンなど思いを共有し、一体感を持って経営を行うためには、個人一人一人に納得感を持ってもらうことが極めて重要です。工藤会長は、普段から「数字で語る」ことで、戦略や方針に客観性や明瞭性を持たせ、役職員のベクトルを合わせることに注力されてきたのではないでしょうか。経営の実践に当たり、「数字」は経営者にとって大事なツールだと感じました。

 

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「人材こそが会社の成長の源泉」や「環境への対応なくして次はない」、「必要な人材は、何かに興味を持って考えられる人材」、「ビジョン等の共有で大事なのは相手をリスペクトすること」など、経営者として心掛けておくべき金言も多くいただきました。
今後、自らを磨く時の糧にしたいと思います。お忙しい中、ご講演いただき、感謝申し上げます。ありがとうございました。(E・K)

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